こころのお知らせけいじばん「性別違和・LGBT」

 まずお伝えしたいのは、LGBTは精神疾患ではないということです。それによって苦悩の著しい人や、身体治療を求める人が、医療機関を訪れるのです。精神科では近年、適切に支援するため理解を深めようと動いており、その目的での情報発信です。教育の分野も同じで、2016年には「性同一性障害や性的指向・性自認に係る、児童生徒に対するきめ細やかな対応などの実施ついて(教職員向け)という研修資料を文部科学省が出しています。

 2018年の民間企業による調査では、8.9%がLGBTに該当すると答えています。レズビアン、ゲイ、バイセクシャルは好きになる性(性的指向)を表していますが、トランスジェンダーは身体的性別とこころの性別(性自認)が一致しない人を表しています。戸籍上の性別は男性と女性の二つですが、性自認にはグラデーションがあり、男性から女性への自己認識は連続的であると言われています。また、中性や無性を訴える人もいます。
 
 違和感は物心ついたときから、という場合が多いようです。しかし幼いころの症状は、のちに減ることがあります。性自認は揺らぐこともあり、自認する性別が変わることもあります。治療や相談の現場では、精神的に不調になる時期は2つあると言われます。ひとつは12歳前後で、第二次性徴により体やこころが変化し、自認する性別とのギャップに混乱する時期です。同じ時期に性自認に合わない中学校の制服や規則で悩むことも重なり、不登校などにつながることもあります。もうひとつは30代頃で、家庭や職場から結婚を期待されることで、カミングアウトの問題もあり深刻になる時期です。
 
 「いのちリスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」が実施した「LGBTの学校生活に関する実態調査(2013)」では日本のLGBTの大半が学校生活でいじめを受けたりLGBTに関してからかいをうけたりした経験を持つようです。

 このような経緯から、自己否定や孤立につながりやすくなります。ありのままの性自認を受け止めてもらえることが必要です。親が「育て方を間違った」と悩む場合もありますが、育て方によるものではなく、世界中に一定の割合で存在するのです。家族や周囲がありのままに受け止めるだけで、自尊心が驚くほど改善することはよくあります。さらに、同じような思いを持つ仲間やロールモデルに出会い、アイデンティティを確立することも必要です。インターネットで多様な性自認のあり方を知ることや、適切な当事者会で仲間をみつけ思いを分かち合うことも有効です。
 
 
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「こころのお知らせけいじばん」は
精神科専門医いわもとあきこさんによる連載です。

カテゴリ:「こころのお知らせけいじばん」

公開日:2021年12月30日